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超原子価ヨウ素及び超原子価臭素化合物の化学の展開
 三価の超原子価ヨウ素反応剤を用いた触媒的酸化反応の開発

三価の超原子価ヨウ素化合物を活用して従来行ってきた反応を基盤として、最近三価のヨウ素反応剤の触媒化にはじめて成功しています。この触媒化によって、ごく少量の一価のヨードベンゼンと安価な共酸化剤mCPBAを用いて化学量論量の反応と同等の結果を再現できることから非常に経済的であり、本法は学術的のみならず合成化学的にも潜在的に非常に高い価値を持っています。

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 三価の超原子価臭素化合物の合成とその有機合成反応の開拓

臭素はその酸化電位が高いため(イオン化電位 eV: PhI 8.69, PhBr 8.98)、三価の超原子価有機臭素化合物の合成は困難です。そのため、従来アルキニル基を配位子として持つ超原子価臭素化合物はこれまでに合成されたことが無く、またその反応性についても全く不明のままでした。これらの化合物を合成できれば、極めて高い反応性をもつことが期待されます。我々は三価の超原子価ヨウ素化合物の合成において、既に有効であるということが確立されているI(III)-B(or Si, Ge, Sn)交換反応を検討したところ、期待したとおり高い反応性を持つ種々のアルキニル-λ3-ブロマンが高収率で得られることを見出し、これらがMichael受容体として極めて高い反応性を持っていることを明らかにしています。実際に、求核性のほとんど無いと考えられているトシラートアニオンやアルキニルスズがMichael付加を起こします。この反応は対応するアルキニル-λ3-ヨーダンでは全く進行しません。

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オレフィン炭素上に三価の臭素原子が結合したビニル-λ3-ブロマンは、これまでに単離されたことのない未知の化合物です。1985年にOlahらにより、臭化ビニルにMeF-SbF5を作用させると不安定なビニルブロマンが生成することを報告していますが、これは極めて不安定なものであり、-78℃でも分解するためもちろん単離はできません。我々は、末端アセチレンに対し、BF3-Et2O存在下ジフルオロブロマンを作用させると、β-フルオロビニル-λ3-ブロマンが効率よく得られることを見出しています。また興味深いことに、5-クロロアルキンを用いると塩素がβ位に転位したβ-クロロビニルブロマンが収率良く得られてきます。これらは安定な化合物で単離することができ、後者は固体構造も明らかにしています。

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三価の超原子価ヨウ素化合物であるヨードニウムイリドの化学は古くより研究され、カルベンやカルベノイドの重要な発生源として位置づけられています。先述のように三価のヨウ素脱離基が極めて大きな脱離能を持つ(TfOの約100万倍)ことが高い反応性の理由で、スルホニウムやホスホニウムイリドとは異なりヨードニウムイリドは加熱により高い反応性を有する一重項カルベンを発生します。三価の臭素置換基はヨウ素よりも更に高い脱離能を持つと予想されますので、我々は未知の化合物:脂肪族ブロモニウムイリドの合成を検討しました。期待した通り、最近二つのトリフリル基およびノナフリル基を持つブロモニウムイリドを高収率で合成することに成功し、その反応性について精査しています。ブロモニウムイリドは、対応するヨードニウムイリドでは進行しない種々の反応が進行しており、特異な反応性を有していることが明らかになりつつあります。また、更に高い反応性を持つと考えられる脂肪族クロロニウムイリドの合成にも成功しています。
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